すべての武器を楽器に
内紛が泥沼化し、ゲリラが跋扈する国。某国。目の前で親や子
供、友人が銃弾に倒れ、血を流し、死にゆく姿を目の当たりにし、
自分が生きるための食糧や水もままならない。住む家も破壊されつ
くしている。容赦なく照りつける太陽。砂が舞い、たかるハエの羽
音も気にならなくなった。
時折、目を血走らせた兵士が、銃をたずさえ、駆け抜けていく。
味方だとはわかっていても、あの人たちがいる限り、戦いは終わら
ないことは自明の事実。
生きる目的、希望もない街にニュースが流れた。
「国連が満場一致で採決しました。治安維持のため、某国に多国籍
軍を派遣いたします。派遣表明をしたのは、現在のところ、日本、
ドイツ、フランス、アメリカ…」
数日後、街のはるか彼方から銃弾の音が聞こえてきた。爆発音も
聞こえる。しかし、どこか様子がおかしい。応戦する銃の音がしな
い。断続的に発砲される音が聞こえるだけだ。やがて銃声もまばら
になった。何かが近づいてくる。彼方から近づいてくる砂煙の中か
ら、太鼓、ラッパ、ギターの音が聞こえてきた。気がつくと、街の
中に音楽があふれかえっていた。その後に続いてきたジープから、
続々と資材が下ろされていく。炊き出し用の釜に火がくべられてい
く。医療用のテントが立てられる。「まったく、音がうるさくて、
治療に専念できねーんだよ!」手際よく消毒しながら文句を言う医
者。音楽はやむ気配がない。太鼓のまわりで踊り出すものもいる。
ラッパをふきながら、倒れてしまったヤツがいる。
「これはなんの騒ぎなの? なんだっていうの?」うつろな目
の老婆がつぶやいた。
笑顔を絶やさずギターを鳴らし続ける男が答えた。
「オレたちゃ国連の多国籍軍だ。銃は持ってないから戦うことはで
きないが、みんなをハッピーにすることはできる。歌うことはでき
る。一緒に歌おうぜ!」
戦争よりも祭りを。すべての武器を楽器に。すべての人の心に花を。
これは果たし得ない夢物語なのか。
[rice paper 88 Vol.03 喜納昌吉に期待して 抜粋]
(株)ワッカ代表
片岡一史
